10%より10倍

ある事柄を現状より10倍良くするほうが、10%良くするよりも実は簡単なことがよくある……そう聞くと驚くかもしれないが、これは本当のことである。


何かを10%良くしようとするから、どうしても既存の手段や前提に注意が向くことになる。何かを10%良くしようとするから、多くの人々がたくさんの時間を費やして考え出した既存の解決策をベースに答えを見つけようとすることになる。


こうした課題を解決するためには、少しずつ物事を改善していくという発想を捨てる必要がある。われわれにとっての唯一の方法は、10%の発想や従来のソリューションから離れ、10倍の発想、つまり「ムーンショット」の発想を見出すことだ。


これは、Google Xの責任者Astro Tellerの言葉だ。
ちなみにAstro Tellerさんは、Google Xを"Moonshot Factory"と呼び、自分のことをその"Captain of Moonshots"と呼んでいる。
Google Glassや自動運転車などはここから生まれた。


その根幹にあったのが、このムーンショットだったわけだ。


ちなみになぜ「ムーンショット」かと言うと、かつてケネディ大統領がアポロ計画を発表したとき、月に人を送り込むなんてずっと先の話というのが常識だった。でも、ケネディ大統領がそう宣言したら、数年で実現してしまったっていうエピソードから来ているそうだ。


この前、ある人と話していたら「ウチのサービスに登録してくれる人の内、マッチングする人って15%くらいなんですね。で、みんなこれを少しでも伸ばそうと毎日がんばるわけです。少しでも多くコミュニケーションを取って、少しでも多く情報を集めて、少しでも早く作業をして… と。でも、実は「なんで15%しかマッチングしないんだろう。残りの75%はどうなってるんだ」って考えないと、大きい成長はないんですよね。そう考えると、思いもよらない効果的な打ち手にたどり着くことがあるんです」みたいなことを言っていた。


テスラ・モーターズで、イーロン・マスクのすぐ近くで働いている人に聞いたところによれば、イーロン・マスクもまさにムーンショットの発想で動く人らしい。しかも彼は「物理的な限界に基づいて考えているんじゃないかな。いつも、彼の指示を聞くと「絶対に無理だ」と思う。でも、最後までやり切ってみると、無理だったことは一度もないんです。ただの一度も。」と呟いていた。


誰かはこう言っていた。小さな事業を成功させるのも、巨大な事業を成功させるのも、実はどっちも死ぬほど大変なんだ。だったら、大きい事業に挑戦したいって思わないか?


金曜の夜のオフィスにひとりでいると、ついこういうことを考えてしまう。


さてと。もう一踏ん張り。ずっと先にある月面を目指して、今日のところは足下の課題を片付けてしまおう。