そしていつもいつもいつも
世の中には素敵なことがちゃんとあるんだ。紛れもなく素敵なことがね。なのに僕らはみんな愚かにも、どんどん脇道に逸れていく。そしていつもいつもいつも、まわりで起こるすべてのものごとを僕らのくだらないちっぽけなエゴに引き寄せちまうんだ
『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー 村上春樹 訳|新潮社
毎日を生き抜いていれば、どこかで素敵なことはふらっと現れる。
それは必ずしもドラマチックじゃなかったりするけれども、ちゃんとやって来る。
でも、つい僕らは「日々のもろもろ」に絡めとられていく。
小さなことの積み重ねの忙しさにかまけて、素敵なことの匂いなんて忘れてしまったりする。
ある日、素敵なことが静かに近くを通り過ぎる。
そのときに、耳を澄ませることが出来るか。一歩踏み出せるか。喉から声を絞り出せるか。
そのためには準備がいる。体を動かしておくべきだし、喉も潤っていた方がいい。
そういう意味で、自分が「素敵だなあ」って感じることを、たまにみんなに伝えておくことは大事なんだと思う。
そうしておくと、たまに彼らが思い出させてくれる。気づいたら脇道に逸れてしまっていた自分を呼び戻してくれる。
そんなことがあった。
大事なことを、書き記しておいて、まわりの皆に預けておく。
自分のちっぽけなエゴでそれが見えなくなった頃に、彼らがふらっとその手紙を届けてくれる。
昔どこかで、未来の自分に宛てて手紙を書いたことがあったな。
たぶん誰かが、それをあるタイミングで送り返してくれる仕組みだった。
そんなにキレイにはいかないけれど、たまに種を植えておくといい。
忘れたころに、それは芽を出すかも知れない。その芽は君を導いてくれるかもしれない。
たまにでいいけど、何かを素敵だなあと思ったら。それをまわりに伝えておこう。
意外な人が受け取ってくれることもある。思わぬ熱意が返ってくることもある。
意外な人の思わぬ熱意に、視界が開けることがある。岩盤に小さな穴が空くことがある。
伝えておこう。出来れば広く。