第58回日米学生会議理念

perman2006-11-15

僕たちにとって最後の舞台、第58回日米学生会議日本側報告会まであと18日。
だからこそ今、もう一度原点に立ち戻る。


世界を変えるためには、この世界に生きるすべての人が世界を変えようとしなくてはならない。
そして、すべての人が世界を変えようとするためには、すべての人がそれぞれにとっての理想の世界をその心に持たなくてはならない。
理想の世界は、一人ひとりの価値観から描き出される。


価値観から生まれる最初のもの、それは問題意識だ。
その問題意識をもとに、人は世界を切り取る。
その人だけの切り口から、人は世界を見る。
そして、心に響くものや、変えなくてはならないものを見つけ出す。


自分の理想の世界の実現には、今の世界のどこをどう変えれば良い?
どう変えると、どれだけ理想に近づく?
私の理想は、本当に究極の理想なのか?
このような自問をこの世界に生きるすべての人が繰り返し、それぞれの形で行動に移すようになれば、世界は変わる。


だからまずは、それぞれがそれぞれの価値観を確立する必要がある。
では、価値観を確立するにはどうすればよいか?


まずは、自らを見つめる必要があるだろう。
しかし、自らを見つめるには、他者が必要だ。
自らとは異なる価値観を持つ人びととのぶつかり合いや交流の中で、人は自らを見つめ、価値観を磨き上げることができる。


自らとは相容れない考え方や、生き方をする人びとがいることを知り、彼らと触れ合うこと。
その中でしか、価値観を磨き、確立することは出来ない。
違いを知ること、それは自らを知ることだ。
彼らとぶつかり合い、はじめてその存在を許容することができるようになるだろう。
あるいは、どう働きかければ彼らの考え方を変えることができるのか、考えるかもしれない。
そうやって、人は価値観を磨いていく。




日米学生会議は、自らと異なる場所に生まれ、異なる環境の中で生活し、異なる経験をしてきた人々と出会う場である。
彼らは、自らとは相容れない宗教を信じているかもしれない。
彼らは、自らとは相容れない考え方をするかもしれない。
彼らは、自らとは相容れない生き方をしているかもしれない。
彼らと出会い、一ヵ月間ともに旅をし、ともに過ごすこと。
彼らと話し、時にはぶつかり合いながら、ひとつのものを作り上げること。
それが、日米学生会議である。



アメリカは、世界の中で最も日本と強い関係を持つ国のひとつである。
政治経済的にも、軍事的にも、文化的にも、アメリカが大きな影響を日本に与えていることは間違いない。
歴史的に見ても、日本をアメリカ抜きで語ることは不可能である。
開国、太平洋戦争、占領、日本史にアメリカが刻んだ出来事は多い。


世界に目を向ければ、アメリカは唯一の超大国と言われている。
グローバリゼーションの中心にいると言っても過言ではないだろう。
世界に冠たる軍事力を持ち、大統領の行動を世界中が見つめている。
アメリカ企業は地球上のありとあらゆるところに進出し、アメリカの文化は世界中で受容されている。


そのようなアメリカに暮らし、その空気を吸い、教育を受けている大学生と意見を交わすことは、日本を知り、世界を知る上で欠かせないことであろう。
彼らは世界をどう捉えているのか。
彼らの日本観はどのようなものなのか。
彼らは日々をどのように送り、どんな夢を持っているのか。
一ヵ月間ともにひとつのものを作り上げる中で、それらに触れ、ぶつかり合い、知っていく。
それは、自らの価値観の輪郭が見えつつあり、なおかつ一ヵ月間ひとつのことに打ち込むことができる時間のある、大学生にしかできないことである。
学生である私たちは、地位や利害に縛られずに、活発な議論を交わすことが出来る。
変化の過程にいる私たちだからこそ、他者とのぶつかり合いの中で自らを見つめ、磨き上げていくことができるのだ。




第58回日米学生会議のテーマは、「二国間を超えた未来―伝統への回帰と私たちの挑戦―」である。
戦後60年が過ぎ、現在日米関係はかつてないほど良好で強固なものとなっていると言われている。
そんな今だからこそ、日米関係を見つめなおし、その未来を考えなくてはならない。


現在、グローバリゼーションにより世界は稠密化し、ヒト・モノ・カネなど様々なネットワークが相互に結びつき、依存し合い、複合的に統合されつつある。
国内の出来事は海を越え、たくさんの場所にすむ様々な人に影響を与える。
地球の裏側に生きる人びととさえ、瞬時に繋がることができる。
テロの脅威が地理的に遠く離れた場所からもたらされることもある。
環境破壊や資源枯渇をはじめ、地球規模で対策を考えなくてはならない問題も多い。


そのような時代に、二国間関係だけで世界を捉えることには限界がある。
二国間から地域へ、そして世界へと視野を広げ、大きな枠組みからもう一度日米関係を見つめなおす。
そのような作業なくしては、日本そして世界の未来を考えることはできない。




そのためにまずは、私たちは日米学生会議の原点に立ち戻る。
「世界の平和は太平洋の平和にあり、太平洋の平和は日米間の平和にある。その一翼を学生も担うべきである」
一ヵ月の活動を通し、この理念の意味を、そして一人ひとりの一ヵ月間の意義を、それぞれの胸の内に落とし込み、刻んでもらいたい。
そしてはじめて、私たち一人ひとりの挑戦がはじまる。
それぞれの未来へと走り出すことが出来る。


以上の目的を達成するために、本会議における各分科会の活動やプロジェクトは、それぞれ明確な目標を設定し、その成果を社会へ発信することを目的とする。
それを参加者全員が共有することで、日々のグループワークやフィールドトリップは全体の流れの中で意義付けられ、相互に結びつくことになる。
多種多様なテーマと切り口を持った活動は有機的に繋がり、その中で自由な発想と柔軟性を持つ学生たちが活発に意見を交わす。
こうした異なる価値観を持つ参加者同士の協働によって、より深い相互理解と信頼関係の醸成、人間的成長が実現されるのだ。