味覚イノベーション

日経マガジンの五月号に、面白い特集が載っていた。

「味覚イノベーション

アメリカでは、“食の多様性”をキーワードに、なんだか工場でつくられたような体に悪いものを食べるのはやめて、近所のちいさな農場でていねいにつくられた野菜を食べようよって、みんながライフスタイルを変えはじめています。っていう記事。


その背景には、大規模農業偏重への反省が、それも農務省が98年にまとめた「行動のとき」ってな報告書があるんだって。

「大規模農場ほど効率的という見方は誤り」――。報告書はそれまでの常識を覆すような言葉であふれていた。
「大規模偏重の政策は、一部の農場に生産が集中して競争がなくなることを考えていない。多くの家畜が限られた区域に集中し環境に悪影響をもたらすことを考えていない。巨大農場を病気や天災が襲った場合の供給リスクを考えていない。長距離を輸送する際の化石燃料増加コストを考えていない」
さらに「地域社会における中間層の欠落は、社会、商業、教育、地方政府に深刻な悪影響を及ぼす」とも指摘した。


冒頭に「キング牧師とジェファーソン大統領にささげる」と書かれたこの報告書は、大規模農場での低賃金労働者の活用や人種差別に対する批判がきっかけになったらしいんだけど、


それでもこれを環境保護団体でも、農業NGOでも、大学の研究チームでもなくて、農務省が出してるってのが面白いよね。しかもそれを、公民権運動の指導者と「独立した農家こそが民主主義の中核」って言った大統領にささげるなんて言えちゃうのがかっこいい。


そしてそれが、人々を動かして、社会を変えている。