マイペース

バタバタした二週間がひとまず、終わった。
久しぶりにゆったりとした心持ちで、JFK空港のバーで寛いでいる。
何だか息の詰まる二週間だった。


チキンバーガーに、Dos Equisのドラフト。
空港の店だけど、ライムをつけてくれるくらいには、気が利いている。
付け合わせのチップスが厚手でビールに良く合う。いい感じだ。


TVでは、ニックスとヒートのゲームが流れてる。どうやらプレーオフみたいだ。
Jeremy Linは、相変わらず怪我で、ジャケットを着てコートの脇にいる。(そういえば彼のbiographyが出版されるらしい)
ジワジワとヒートがニックスを突き放していく。やっぱりLinsanityが必要なんだよ、ってニューヨークの人たちは呟いてるかも知れない。


小学校の通信簿で、毎年「マイペース」と書かれていたのを思い出す。
本当に、自分は相変わらずぼーっとしているなあ、と思い知らされる。
ふう。


「マイペース」が祟って、当初の予定より3日遅れで、日本に戻る。
まず香港に向かい、そこから東京への便に乗り換える。香港での待ち時間が6時間あるみたいだ。トランジットって、街には出れないんだっけ?
いろいろと最初の計画からずれてしまったけど、香港で運命の美女にでも出会えるかも知れないし、GWの旅行気分で楽しむこととしよう。


香港といえば、さっき読んだEconomistの記事が、地味に衝撃的だった。
A game of leapfrog - Asian economic rankings
いわゆる、日本の「購買力平価ベースの一人あたりGDP」というヤツが、シンガポール、香港、台湾に続いて、あと五年くらいで五年くらいで韓国にも抜かれますよ、って記事。


まあ、日本経済が長い間停滞しているってのはみんな分かってる。
中国にGDPで抜かれたよ、って言われても、まあ人口規模がぜんぜん違うし、実感わかねえなあ、って感じだったと思う。
でも、なんか、経済的な豊かさの指標として一番使われる数字で、韓国に抜かれるって聞くと、おおお、そうかあ、って。
(やっぱりシンガポールとか香港とか台湾とは、ちょっとインパクトが違うよねえ)


(ちなみに、これは購買力平価ベースだから、やっぱり東京に人口が集中していて、信じられないような住宅価格だってことが一因ではある。
そういえば先輩が、面白いことをブログに書いていた。
都市化する世界-私が今年考えたいテーマ(後編1) - My Life After MIT Sloan


これからしばらく、キツイ時期が続くかも知れない。
何だか、焦る。どんどん皆が日本を追い抜いていく。
でも、今更「猛烈に働いて、所得倍増だ」って言われても、みんなしっくりこない。


どこを目指せばいいのか分からない。
それでも、「世界第二位の経済大国」っていう肩書きがリアルな響きを持っていた時代には、余裕を持っていられた。
その前提が崩れていく。


みんな何となくは思ってる。経済的な豊かさが全てじゃない。
うん、全てじゃない、とは思う。中には、そんなもの意味がないって言う人もいる。
でも、本当に切羽詰まった状況でも、本当に、経済的な豊かさなんて意味がない、って言えるのかな。


もちろん、かつてのように、国民みんなが酔える大きな物語なんてたぶん作り出せない。
それぞれが、それぞれのストーリーを紡ぐしかない。それが出来る人は、どんどん勝手に歩みを進めればいい。
でも、それって、多くの人にとっては、けっこう苦しいことだ、と思う。


どこにもたどり着かずに、搭乗の時間が来てしまった。
まあ、すぐに答えが出るような話ではないし、答えなんてないんだろう。
とりあえずは、我々よりも豊かな暮らしを送る香港の美女に思いを馳せつつ、搭乗口に向かうことにする。