いつの日かハワイイで

昨日久しぶりに夕飯を一緒に食べた女の子が「ハワイは最後のサンクチュアリ」ってつぶやいていた。
二人で自家製のホットサングリアを飲みながら、もう一人の友だちが来るのを待っている時だった。


それはフランクフルトやウィーンで飲んだグリューワインにとてもよく似ていた。どちらも寒かったなあ。
ちなみに僕はその日カリカリに揚げたトンカツにデミグラスソースをかけたものと五穀ご飯を食べた。意外な取り合わせだけど、悪くなかった。


最後のサンクチュアリ


彼女は日本に生まれて、日本とアメリカで半分ずつくらい育って、そしてカリフォルニアが大好きな女の子。
ボストンで勉強するために、もうすぐ日本を出ようとしている。
ふと気になって検索してみたら、ちょうど4年前の日記にもその子が登場してた。


サンフランシスコに行く前に近所の図書館で借りて、そのままになっていた本をちょうど一昨日くらいから読んでいた。
池澤夏樹の『カイマナヒラの家』。
ハワイに、いやハワイイにかつてあった(今もあるのかも知れないけど)ある家に住んだ日々とその住人たちにまつわる話。


彼らは、バブル期に日本企業が買ったその大きな家を掃除し修繕し管理する代わりに、そこに無償で住んでいる。


日本からサーフィンをしにハワイイにやってくる主人公と、ハワイイに暮らす日本人のジェニー(お父さんはフランス人だ)との会話。

「でもあなたはサーフィンを見つけた」
「たしかにね」
「サーフィンに出会えたら、それでその人生はもう半分は成功なのよ」
「たしかに」とぼくは繰り返した。


そのジェニーの彼、ミッキー(「八分の五まで中国系のハワイイ人(残りは先住民と白人と日本人)」)が、ウィンドサーフィンについて話した後のせりふ。

これでぼくは自分のことを全部きみに話したことになるよ。
これ以外のことはぼくの中には何もない。
なぜって、ぼくはウィンド・サーファーだから。


僕は行ったこともないのに、ハワイイとカイマナヒラの家(とそこに住む人々)が大好きになってしまった。
ウィンドサーフィンは難しすぎて風に乗れなかったし、サーフィンだってかじったことがあるくらいだけど、池澤夏樹が描くカイマナヒラの家での生活は一度は味わってみたいと思える世界だ。前にも彼の本を読んで、イビサとかゴアに行ってみたくなったのを思い出した。


そもそも僕は昔から「良き場所の管理人」という職業に憧れている。
海辺のカフカに出てきた図書館しかり、カイマナヒラの家しかり。


すべてはサーフィンのためにあるという生活。
サーフィン以外には何もない、というような人々が暮らす場所。


ハワイイで一番の建築家が丹誠込めて作った、大きくて細部にこだわりが光る家。
庭からそのまま海に出ることが出来る家。


僕はまだハワイに(そして当然ハワイイにも)行ったことがない。