太宰治

perman2006-07-14

・・・お互いに、これから、大いに勉強しよう。
 勉強というものは、いいものだ。
 代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも
 立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。
 植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り
 勉強しておかなければならん。
 日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、
 将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を
 誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。
 覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、
 カルチベートされるということなんだ。
 カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記していることでは
 なくて、心を広く持つということなんだ。
 つまり、愛するということを知ることだ。学生時代に
 不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。
 学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。
 けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に
 一つかみの砂金が残っているものなんだ。これだ。これが貴いのだ。
 勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に
 無理に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、
 真にカルチベートされた人間になれ! 
 これだけだ。俺の言いたいのは