ガラムの夜と勤労感謝
バリの甘ったるいガラム煙草を吸って、本を読んでいたら深夜になっていた。
気持ちの良いかっきりした性格の主人公の、36才で無職の惨めな休日の話だった。
丁子の弾けるぱちぱちという音を聞きながら、口に広がる甘さを楽しむのが好きで、
煙草は吸わないけれど、たまにガラムを見つけると買ってしまう。
なんでこんな時間にパソコンを開いたかというと、ちょっと気になったことがあったからだった。
ごちそうさまと言って席を立った。少し足元がふらついた。
「なんか落ち着いたよ。今日、この店開いてなかったらどうしようかと思った」
ふと、これって勤労感謝だろうかと思った。日付は二十四日に変わっていたけれど。
ん?と思って検索してみたら、今日は勤労感謝の日だった。ちょうど一日、小説とはずれていたけど、悪くない偶然だ。
「勤労感謝の日」という小説を読んではじまった、勤労感謝の日。
マスターは「明日は雪降るかもしんないよ」なんて酔っ払った客を送っているんだろう。
「私はこの店に夜を買いに来るのだ」
今日も寒かった。明日、雪は降るだろうか。