現実主義的ユートピア

perman2006-11-06

ロールズは、彼の正義の原理を国際社会へと発展させた著書『万民の法』の最後で、このように述べている。

「相当程度に道理に適った万国民衆の社会の一員として存在するような、相当程度に道理に適った立憲民主制が可能であるということ――現実主義的ユートピアの観念は、これを示すことにより、われわれを現実の社会的世界へと宥和させる。
現実主義的ユートピアは、そんな世界がいつかどこかに存在し得るということを立証するが、そんな世界がいつかどこかに存在するに違いないとか、存在するはずだといったことを立証するものではない。
(中略)
もちろん、現実のものとすることが重要でないなどと言うつもりはないが、私は、こうした社会秩序の可能性というそのこと自体が、まさしく、われわれを社会的世界へと宥和させるものとなると信じている。
この可能性は単に論理上の可能性ではなく、社会的世界というものが有する深い性質や傾向性に結びついた可能性なのである。」


万民の法

万民の法


 そして、彼はこう続ける。

「なぜなら、国内・国外のどちらであれ、自立的で、相当程度に正義に適った政治的・社会的秩序は可能であるということが、十分な理由と信じられる限りにおいて、当然、われわれやその他の人々も、いつかどこかでこうした秩序を実現するだろうという希望を抱き、ついで、その実現に向けて何らかの行動を起こすことも可能となるからである。」


リアルな“次の一歩”のための、理想の提示。