武装島田倉庫、あるいは第四の古典プロフェッション。
思考を止めるな。
最初の週の、最後の夜に開かれた花見パーティで、彼はそう言った。
片手にはシャンパンだか何かを持って、少し顔を赤くしながら。
思考を、常に疑問で終える。
「わかりました」で終えてしまえば、思考はそこでストップする。
「だから、何なんだ。何に使える?どうすればもっと良くなる」と問い続けろ。
頭脳を常にオープンにしておくんだ。
「わかりました」終結型の日本の教育の弊害について話す彼の眼は、ギラリと鋭く光っていた。
思考を止めずに、想像を膨らまし、極限まで突き詰めた創造世界。
- 作者: 椎名誠
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/11/30
- メディア: 文庫
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先の北政府との戦争により、海は油と泥で泥濘化しのったりとうねっている。
法治局の飛ばす知り玉は、不気味な目玉を突き出しぶんぶんぶんと羽音をさせ空中を彷徨う。
戦争と盗賊と失業者たちにより破壊され分断された道路上を、特殊金属で塗装された16輪の装甲貨物車が走りぬける。
そんな混沌の中で、登場人物たちはそれぞれに自分たちの生活を送ってる。
ココロオドルよ。
さっきの彼は、こうも言っていた。
俺たちは「第四の古典プロフェッション」なんだ。
古典プロフェッションは、医者・弁護士・聖職者だけを指してきた。
プロフェッションって言葉は、confessとかと同じ語源から来てる。
つまり、患者や被弁護人や信者から告白されそれを受け止め、ともに解決策を探ることができる職業ってこと。
そんな哲学のはじまり、マービン・バウワーの思い。
現代の経営者は孤独である。
株主にも、従業員にも言えないことを山ほど抱え、それでもたくさんの人々の財産や生活のために会社を経営していかなくてはならない。
彼らが様々なことを打ち明け、相談に乗れる存在が必要だ。
何があろうと彼らのために尽くし、彼らの秘密を守り抜き、信頼を勝ち取ることができるか?
自らの利益の最大化を掲げ、切れ味鋭く攻め込んでくる近代プロフェッションとも闘い抜けるか?
最後まで諦めずに、しつこいくらいに徹底して、彼らを助けることができるか?
そう、彼は問うた。