空を使う

コピーライターの前田知巳さんが、森ビル社長の森稔さんにインタビュー。*1

国際都市としての東京

  • 空港とか環状線とか、東京がグローバル都市となっていくために当然できていなければいけないものがさっぱりできない。世界の動きや大局を見ないで銘々勝手なことを言っているからです。非常に合理性に欠けるところがあって、そのために東京は国際的な都市間競争に劣後しつつある。

空を使う

  • よく「点から線に、線から面に」といいますが、街づくりの場合は「点からウェブに」発展していくのがいいかなと思っています。ベタッと一色に塗り替えてしまうのでなくて、web(網状)に展開していけばいい、とね。変えたくない部分や残すべき価値のあるものは変える必要はない、やるべきところに協調すればいいのです。 
  • 「空が残っている」というのも、「まだ空を使っていない」という意味で言ったのですが、ある部分を超高層化する(空を使う)ことで、空を使わないところをたくさん残すこともできるわけです。戸建てでベッタリ埋め尽くして、緑を食いつぶしてしまうような街ではなく、結節点をたくさんつくったウェブのようにあちこち穴が空いている、そういう街であった方が余裕があっていいんじゃないでしょうか。

街づくりの原則

  • 以前は、街づくりの原則が違っていました。ひとつは戸建て住宅、事務所、店舗など小さなものの集合体に最もいい骨格にするというので、区画整理をどんどん進めました。もうひとつは、働くところ、遊ぶところ、公有地など、目的別に分類し、用途を純化するのがいいんだとされていたのです。
  • 実際にやっていることは、個々の人たちを説得しながら事業を組み立てて、あるべき街に持っていこうということでした。我々自身が間違ったときもありまして、いいオフィスビルだけつくればいい街になると思った時代もあったけれど、だんだんにしかるべく職住コンプレックスの街の方がいいんだというような考えに変わってきた。

街づくりの原則その②

  • 東京湾も気がついてみたら高波対策ばかりで、自然との触れ合いを破壊してしまっている。自ら人が親しめる自然を壊して、人が来なくなったと嘆いている。こんな見当違いなことが日本中のあちらこちらで行われています。
  • 高度利用すればいいところを低利用しかできない容積規制をかけて、全部をベタッと低容積の街にしてしまっているところも多い。先ほどいいましたが、一昔前の用途純化の都市構造で、職住を分離して行き来を難しくしてしまっているのです。生活の基本的な条件を破壊しているから、住みにくくなってしまうのです。
  • 農業人口は今2%ですが、70%を占めていた時代の政策を未だに続けている。街をつくってきた立場からみると、間違った政策ややりすぎた計画で返って自分で環境を壊しているような感じを受けます。しかも、まだやり足りないと思っている。
  • 高いビルもある代わり、何もしないところもあったらいいのです。みんな低層の建物を並べるから街は建て詰まり、環境は悪くなる。そういうことを実際にやっている。コンパクトシティ化するべきで、基本的に都市計画が間違っているのだと思います。