あるとき、慈悲深い神様は、仔羊がオオカミに食べられているのを見て憐れに思われてから、オオカミの牙をぬいて羊に変えられた。羊たちは平和に暮らすようになった。ところが数年たつと羊の数が増え、一部の力強い羊たちが草原を占拠、弱い羊は飢えだした。神様は飢える羊を憐れに思われて、羊たちに等しい広さの草原を割り当てられた。それで羊たちの争いはなくなったが、どの羊たちも痩せ衰えて死んでしまった。神様にも草原を広げることはできなかったのだ。
この神様の名はカール・マルクスだったか毛沢東だったか、日本の官僚だったかもしれない。

やがて神様は交代した。今度の神様は前任者の失敗に懲りて逆のことをやりだした。オオカミたちに羊を捕る自由を許すとともに、いっそう強力な牙と知恵を与えた。地上は弱肉強食の場となり羊は食いつくされ、オオカミたちの共食いがはじまった。数年後はただ一頭の巨大なオオカミだけが荒野をさまよっていた。
このときの神様はデビット・リカードとも訒小平ともいう。東の島国では小泉純一郎だという者もいるらしい。

とある知り合いが、日記で取り上げていた。堺屋太一の文章みたい。