バスに揺られて読んだ三冊

朝、起きるでしょう。まだ暗い季節もあれば、今ごろのようにもう太陽が登っていて十分明るい季節もあります。空気はとても冴えざえとしていて、新しい一日が始まったんだな、と思います。お湯を沸かして、お茶の準備をします。そして庭に出て、草木の様子を楽しみます。時には思いもかけなかった植物が、もくもくとした土の間から芽を出していたり、つぼみがふくらんでいたり、新しい緑の葉がつやつやとして朝露を抱いているのを見つけたりします。庭は毎日変化します。そして仕事をします。私はそういう毎日のほかにどんなことも望みません。変化を前もって知ることは、私からsurpriseの楽しみを奪います。だから必要ないのです。

西の魔女は、ニヤリと笑う。
摘んできたハーブでハーブティーを作って、虫除けに草木にかける。
手洗いしたシーツを、ラベンダーの茂みの上にふわりと載せて、よく眠れるように香りをつける。

まいが「おばあちゃん、大好き」といえば、
「アイ・ノウ」と言ってニヤリと笑う(微笑むのではなく)。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)


行きと帰りのバスの中で、本を読む。
日本語の活字にたまには触れていないと、何だかダメなのだ。


実は魔女になる秘訣は、すべてを自分で決めることなんだとあのグランドマザーは言うのだけれど、
そういう意味で彼女は森達也と同じことを孫娘に教えていたのだ。


森達也は、ひたすらこう繰り返す。

世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい

自分で考えるんだよ。ちゃんと問題を、引き受けろ。
等身大の、生身の自分で、考えて、答えを出すんだよ。
間違ってたっていいし、憎悪に燃えたっていい。
でも、とにかく一人の人間として、問題と向き合え。
他者への想像力を働かせるんだ。自らの責任で。




想像力といえば、すぐに浮かぶのは宮沢賢治だ。
彼の描く世界は、もうどうしようもないくらい透きとほつて水素のように輝いている。

新編銀河鉄道の夜改版 (新潮文庫) [ 宮沢賢治 ]

シグナルはこう、シグナレスに言う。
『ああそうだ。あの音だ。ピタゴラス派の天球運行の諧音です。』


その夜空では、チュンセがポンセに話しかけている。
「今日は西の野原の泉に行きませんか。そして、風車で霧をこしらえて、小さな虹を飛ばして遊ぼうではありませんか。」


たまりませんな。