麻のタオルと晴れた日の海の残像

海辺の町に滞在している
平日の午後にビーチに向かうと寝そべる人の多さに驚く
ホテルが幾つかとバックパッカーが一つあるだけの静かなビーチ


今はカップルとアパートをシェアしている
昨年結婚したばかりのオーストラリア人とノルウェイ
使い込んだ麻のタオルみたいな人たちで気持ちがいい


海辺の町はとても居心地がいい
海が見えなくてもどこかに海の匂いが漂う
影と言ってもいい 遍在する 晴れた日の海の残像


「もしもこの僕が神様ならば 全てを決めてもいいなら
7日間で世界を作るような真似は きっと僕はしないだろう
きっともっとちゃんと時間をかけて またきちっとした計画を立てて」


ヨージローは歌うわけだけど
時に人はその美しい在り方に驚き そこに神の影を見たりするわけだ
それをタンパク質に垣間見る人もいれば 生態系に見出した人もいる


カントはそれを世界史に見て 普遍史の理念を描いた
完璧にデザインされたかのようにも見える世界の中で
それでも人は必死にもがいている 前に進もうと這いつくばっている


スイスのプライベートバンクからやってきた彼女は みんな迷子なんだよっていう
ハーバードでビジネスを学ぶあの人は みんな同じ価値観しか持っていないって叫ぶ
ダーレンドルフがいたらリガーチャーなき現代を嘆くかな


それでいて何だか必要なものはもう全部手に入れてしまったかのような現代ニッポン人は
残る地平をどこに探せばいいんだろう 誰も教えてくれないそれを みんな追い求めてる
国際交流?開発? 環境問題?アート?デザイン?社会起業?非営利? 地域社会?友だち?愛?


とりあえず俺はブリスベンからパースまで自転車で旅をしようという彼と
ドラッグや酒に溺れ 家さえもなきこの国の若者たちのために何かできないかと頭を絞ったりしている
いきなりそんなことを言い出すジャパニーズへの この国の人々の反応はそんなに悪くない