ピース。

「暗い気分になりかけると何も考えずに部屋の掃除をするんだよ。それがたとえ夜中の二時でも三時でも、かたっぱしから皿を洗ったり、ガスレンジを磨いたり、床に雑巾をかけたり、布巾を漂白したり、机の引き出しの整理をしたり、洋服ダンスの中の全部のシャツにアイロンをかけたりするんだ」

さいきん、村上春樹の短編集を読んでいる。


結婚する友だちと、その未来の奥さんと夕飯を食べに自由が丘に行った。
ほんとうに久しぶりに訪れた自由が丘はほとんど変わっていなかった。
その日は雨降りで、友だちが来るまで雨宿りに立ち寄った本屋でその本を見つけた。


それ以来ちょっとした空き時間に(あるいは空き時間をつくって)一編ずつ読み進めている。
赤い装丁が、かなり前に読んだ、黄色い表紙の短編集とセットになっている。
どこかで読んだことのあるはなしも結構混ざっていて、ちょっと楽しい。


白布温泉に向かう新幹線の中である短編を読んでいたら、その短編がサリンジャーナイン・ストーリーズに出てきた話だったような錯覚を覚えた。(ところで、錯覚を覚えるのって腹痛が痛くて腹を切腹してる?)
前に日記に登場したバナナフィッシュ日和って短編だったかな、と思っていたら、ハルキのほうの次の話は「カンガルー日和」だった。
英語も一緒。"A perfect day for bananafish"に、"A perfect day for kangaroos"。


ハルキの意図的な遊びなのか、それとも単なる僕の勘違いなのか、こんど気が向いたら確かめてみよう。

 いつの時代でもそうなのだけれど、いろんな人間がいて、いろんな価値観があった。でも一九六〇年代が近接する他の年代と異なっているところは、このまま時代をうまく進行させていけば、そういう価値観の違いをいつか埋めることができるだろうと我々が確信していたことだった。
 ピース。